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■「プロジェクト学習奮戦記」(19) 2004.12執筆 いよいよ今年も後数日で終わろうとしています。 今年最後のテーマは何にしようか悩みましたが、やっぱり一年の締めくくり。来年に残さずに、自分が今気になっていることを全部書いちゃいます。 (前にも書いたけど…重複をお許しください。) まずはこれです! ┌────────────────────┐ | 日本の学力低下!…国際学習到達度調査 | └────────────────────┘ ◆“学力低下”のニュース 12月7日にPISA (OECD生徒の学習到達度調査2003年)の結果が公表されました。「日本は数学6位、読解力14位に転落」(朝日新聞)ということで、各マスコミは、“学力低下”について報じました。 ・朝日新聞「日本は数学6位、読解力14位に転落 OECD学力調査 」 http://www.asahi.com/edu/news/TKY200412070167.html ・読売新聞「日本の15歳 学力ダウン…国際学習到達度調査」 http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20041208ur04.htm ・毎日新聞「学習到達度調査: 日本の15歳、学力黄色信号 読解力14位に低下−−OECD調査」 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/etc/oecd2004/ (※リンク切れ) そして、文部科学省は、初めて「我が国の学力は世界トップレベルとは言えない」との初の認識を示し、来夏までに読解力向上のための緊急プログラムを策定するそうです。 ◆学力bPはやっぱりフィンランド! 本連載の12で「フィンランドの学力向上の秘密」を13で「学力向上”へ切り札:「教師の研修」というテーマで紹介しました。 私の主張は次の通りでした。 【学力向上のためには…】 指導する教師の指導力、技量をアップさせることが必要。そのためには「教師が教育者として大切にされ、教える意欲を持ち、その指導力が適切に評価され、自分の教師としての仕事に自信を持って教育に取り組めるような体制」が必要。 「学び続ける教師」を育てていくことが“学力向上”の切り札! 今回の結果では、フィンランドは、読解力1位(日本は14位)、数学的リテラシー2位(日本は6位)、科学的リテラシー1位(日本も1位)、問題解決力3位(日本は4位)という結果で、前回と同じく連続学力bPでした。 以前指摘したドイツの不振は、今回も変わりありませんでした。教育格差の大きいアメリカも低いまま。香港やシンガポールの好成績は小学校からの能力別教育や競争意識の高さから…?韓国の好成績は、集団カンニングしちゃうような激しい受験競争の影響…?それぞれの国にも悩みがあるようです。 ◆詳しく中身を見てみると 調査の詳しい結果はこちらです。 ※PISA (OECD生徒の学習到達度調査2003年) http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/04120101.htm よく見ると次のような点がわかってきます。 ・日本は、学力が下がってきている。たぶん次回はもっと下がるでしょう(?) ・PISAの調査する学力は、持っている知識や技能を実生活の課題にどの程度活用できるかを評価するもので、日本でいう「学力テスト」とは違う。 ・特に「読解力」が前回が8位で今回は14位で落ち込んでいる。 ・日本は、得点のばらつきが大きく、得点の高い子もいるが低い子の割合が高い。つまり格差が大きい。“落ちこぼれ”があるということ。 ・日本は、学習意欲や学ぶ楽しさが低い。 ・日本は宿題以外の家庭学習の時間が少ない。 ◆どうなる「学力向上」 今回の結果を受けて、ますます「学力向上」への圧力が加わることが予想されます。一部には、授業時数削減を見直し、休みを減らそうという動きもありそうです。文科省の読解力向上プログラムって何だろう。「朝読書の勧め」や「国語力向上フロンティア校の指定」あたりかな。 国語力の向上には、特効薬ってないのに…。 子どもたちの学力が劣っているのは、「国語の力」だというのは、実は、現場では以前からささやかれていたことです。授業時数が大きく減ったり、子どもの本離れ、活字離れが指摘されてきました。(実は大人も…?)国語の授業で何を教えたらいいのかって悩む先生もいると聞きました。「読解」よりも活動が中心の授業をよく見かけます。国語でどんな力を子どもたちにつけるのかよく分からない先生もいるみたい。 「学力向上」って言うとまず、算数・数学のことが持ち出されてきて、その特効薬として少人数指導が使われてきました。算数のテストの点を上げるには、個別指導、ドリル学習、「教師が例題を教えて練習問題をたくさんする」方式でもできます。でも、国語は、そうはいきません。もっと基盤的なもの。日々の積み重ねが必要だと思います。それには、国語をはじめ全教科の授業の質を上げることが必要です。 PISAの調査対象は、15歳でした。つまり、平成14年(2002年)から導入された新指導要領(完全週学校5日制)による影響は、実は少ないと思われます。平成5年(1993年)から始まった月2回の週学校5日制の時に小学生時代を過ごした子どもたちです。新指導要領の成果が見えてくるのは、次回の結果からでしょう。(現状では、改善されそうな気がしませんが…。) ◆「学力向上」をこう考えよう! ・学力を計算力、漢字書き取り能力などの狭義の学力としてとらえるのはやめよう! ・学力を「100マス計算等のスピードや量を競うトレーニング」だけで高めようとするのをやめよう! ・授業時間を増やし、学習内容を増やすだけで学力が向上すると考えるのは短絡的。復古主義や懐古趣味はいらない! ・学習意欲を高め実生活に活かすための「21世紀を生きる力」について考えよう! ・基礎基本と応用の両方が必要なのだ。バランスが大切なのだ! だんだん過激になってきました。私の主張の内容は、12、13と変わっていない。 では、次は ┌─────────────────────┐ | 教師の指導力向上!…教員評価で変わる? | └─────────────────────┘ ◆「学びつづける教師」は教員評価で育つか? 学力向上の切り札は、指導する教師の指導力、技量をアップさせることが必要。それには、今導入されようとしている教員評価制度でいいのでしょうか。 教員の評価制度が変わろうとしています。今年度から新しい取り組みを始めた自治体が増えてきました。 ・教員評価制度の自治体の取り組み(行革国民会議) http://www.mmjp.or.jp/gyoukaku/chiiki/20041015.htm 平成18年度を目標に、日本全国で実施の予定です。これは、公務員制度改革を進める小泉さんのゴール平成18年度と合致しています。 ・公務員制度改革大綱のポイント(首相官邸) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gyokaku/kettei/1225koumuin_s.html 形式だけの教師の「目標管理」「自己評価」は、教師のやる気を高めるものではありません。何のための教員評価かということを忘れないようにしないと成果主義に陥ってしまいます。 マイナス評価だけでなく、前向きに仕事をしていく意欲が湧くような評価でありたいし、そのためには、誰もが納得するような評価であるべきです。それには…やっぱり… 『教職員ポートフォリオ』が必要でしょう! 新しい教員評価制度を否定するわけではありません。教師の授業力が上がり、意欲も高まるように評価される形であるならば、それが学力向上につながると考えています。 新しい年2005年は、「国語力向上」と「教員評価」の関心が高まりそうです。世の中の新しい流れの中で、つい流されてしまいそうです。でも、その本質を見失わないように過ごしたい!と思っています。 |
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