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    ■「プロジェクト学習奮戦記」(18)   2004.11執筆

今回は、次のテーマについて実践していることを紹介します。
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| 算数ポートフォリオ〜教科にポートフォリオを!          |
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◆学力向上は、プロジェクト学習・ポートフォリオ評価で!

「総合学習」でのプロジェクト学習・ポートフォリオ評価の実践研究の成果を教科に生かそうとポートフォリオを活用した算数の授業のあり方を現在校内研究で取り組んでいます。
「総合」の研究で取り組んだ手法を“学力向上フロンティア”の算数に生かそうとする取り組みです!

「算数」と「総合学習」とは、印象としては両極端なイメージがあります。○算数…小さなステップで段階を追って積み上げていく。教科書の決められた内容を学習し、ドリル的な練習も必要。できる・できないがよくわかる。

○総合…系統的・段階的な積み上げは必要ない。教科書はなく、学習内容は自由に考えられる。できる・できないはわかりにくい。

どちらかと言えば、教師が教えるといった「与えられた学び」のイメージの強い「算数」にプロジェクト学習・ポートフォリオ評価の手法をどう導入していけばよいか、初めは悩みました。テーマやゴールは設定できるのか?ポートフォリオって作れるのか?“自由研究”的に各自がテーマ設定を行う発展的な学習ならばできそうだが、毎日の授業で使えるのか?

いろいろと思案している間に次のようなことを考えました。

・「総合」のプロジェクト学習・ポートフォリオ評価の手法を全部取り入れるのはなく、使えるものを取り入れ、アレンジしていけばよいということ。

・算数を「意志ある学び」にしていくには、自己評価が大切!

・算数のポートフォリオはノートでOK。学習の足跡や自己評価が残る内容に。

・「算数」のねらいの目に見えにくい部分(「意欲・態度」や「思考力」)の成長を明らかにしていくことがポイント。ここにポートフォリオ評価を活かそう!

◆算数と総合の共通点〜「自ら学ぶ」算数へ

総合の究極の目標は、「自分で考える力を持ち、自分に自信を持つこと」
算数の目標も「できる自分に自信を持ち、自分で考える力を持つこと」
学習の方法やスタイルは違っても、目標に向かって自分の成長を自覚し、身につけた力を明らかにしていくというプロジェクト学習の手法は算数でも充分に使えるのです。

これまでは、算数では、「知識・理解」「表現・処理技能」の“目に見えやすい”学力の部分がクローズアップされてきました。教師がいかに効率よく教え込むか、教師が教えた問題の解き方を子どもたちがどんどん練習すればいい。でも、そんな時代はもう終わっています!

もちろん教師が教えることも反復ドリル練習(100マス計算?)も必要です。バランスをとることが大切なのです。そして、子ども自身が反復練習の意味を知っていることが大切なのだと思います。目標を持ち、できるようになりたいという願いを持って反復ドリル練習をすれば効果は上がるのです。時にはできない自分を自覚することも大切でしょう。「今できなくても大丈夫だよ。きっとできるようになるよ。だから、この練習をするんだよ。」って。

これまでの算数は、このできないことを子どもに自覚させることがタブー視されてきたように思います。もうそんな時代は終わりにしましょう!できないことであきらめてしまう子を作ってしまうではなく、できない子の(できるようになりたい)という内なる願いを引き出し、できるための方向付けをし、その成長を評価していきたい。自信を持たせていくためには、やっぱりポートフォリオ評価が必要なのです!そこには、自分の成長の跡が残っているのですから。

また、「算数」のねらいの目に見えにくい部分(「意欲・態度」や「思考力」)を育てていくには、ポートフォリオ評価が役立ちます。総合と同じなのです。

つまり、従来の教師から「与えられる学び」の算数から、本来の子どもが「自ら学ぶ」算数に転換することで、プロジェクト学習・ポートフォリオ評価の手法が活きてくるのです。


◆「算数ポートフォリオ」の提案

現在、“学習のプロセスを記録し、自己評価を進める”「算数ポートフォリオ!」を作っています。クリアファイルではなく、ノートに「今日のねらい」「学習の記録」「自己評価」をノートに記述しています。感想で終わらない具体的な自己評価になるように指導しているところです。教師との「対話」でコーチング(子ども自身の考えを引き出す!)する場を授業の中で設けたり、毎時間の目標と自己評価、単元での成長エントリーの評価の場をつくるなど指導の工夫に取り組んでいます。

授業の最初や、単元の導入時には、学習のめあてを確認し、どんな学習をするかという見通しを持ったり、身に付く力について知らせるようにしています。そして、学習の様子が分かるように自分の考えをノートに残したり、感想も記録していくなど、学習の過程が残るようなノート作りの指導に力を入れて取り組んできました。

自己評価をする場面を授業の終わりに設定し、毎時間の学習を振り返りを行っています。通常“目に見えにくい”自分の成長をノートの記録等から自覚することで、意欲を持続させ、主体的に学ぼうとする態度や自ら考える力を育てていきたいのです。

★児童のコメント
・「学習を終えて自分の成長をふりかえって」
ぼくは、正方形をかくのがにがてだったけど、とくいになりました。前は直角なんてしらなかったけど、うまく言えるようになりました。辺やちょう点という所もすぐにわかるようになりました。正方形のことを四角と言っていたのに、むずかしい言い方がわかってよかったなあと思います。

毎時間の自己評価、単元終了時の自己評価がポイントです。ずっと「インプット」ではなく、自分でしっかり「アウトプット」するから、理解が深まり、考える力が育ち、成長を自覚できるのだと思います。

最近「学習感想」を生かした算数といった実践も見られるようです。単なる感想ではなく、自分の学習を客観し、「わかったこと」や「まだわからないこと」を見つけるような自己評価にしていきたいと思っています。

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教科にポートフォリオを活かすことについては、鈴木敏恵先生が、本MMで「未来教育への提言」として執筆中です。とても参考になります。


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