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    ■「プロジェクト学習奮戦記」(8)   2003.12執筆

■「総合学習」に必要な教師の2つの支援


◆「大きな支援」と「小さな支援」
今から5年前、「総合学習」の研究開発校として6年生を担任しながら、「総合」に懸命に取り組んでいた時、「総合」の教師の支援として2つの面が大切だという考え方が校内で生まれてきました。
 当時は、今とは違って、先進校の事例もなく、とにかく実践しながら、どうすればいいかを試行錯誤しながら生み出していくしかありませんでした。教科の学習とは違って、教科書はない。目指すのは、教師が積極的に引っ張っていくような授業ではないだろう。でも、ほっておいては、子どもたちは遊んでしまう。活動はするが学習とはならない。そうした“教師の指導性”と“子どもの主体性”の狭間で、ジレンマを感じながら、抱いたのが、「大きな支援」と「小さな支援」という考えでした。

 支援に大小があるのではなく、支援の対象のイメージとして学年・学級の子どもたち全体への支援(大きな支援)の他に、一人一人の子どもたちへの個別の支援(小さな支援)が必要だというとらえ方をしていたのです。
 教科書のない「総合」の学習をどう進めていくか、単元全体の計画をどう考えて、学習全体を組み立てていくかが教師の大切な支援だと考えました。そして、自分の課題が見つけられない、追求方法が見つからないで止まってしまっている子どもたちを前に、総合学習には、教科の学習とは違って、この個別の支援、小さな支援も絶対に必要なんだ!と考えていました。


◆「全体への支援」と「個への支援」
 やがて、それは、単元全体を通してそれぞれの学習場面で(例えば…課題設定、課題追求、まとめ・表現など)行っていく「全体への支援」と子どもたち一人一人が生き生きと主体的に活動していくための「個へのより細やかな支援」という2つの支援が大事!という考え方にまとまっていきました。
 そして、この「個への支援」については、教育相談的な考え方が大切なんだろうと捉えていました。子どもは、(関心を持たれている、認められている)と感じるときに、自己成長力を発揮して、意欲的・主体的に物事に関わっていく。子どもの気持ちを大切にしていく姿勢を持つことが重要で、そのための具体的な手法や技術のポイントを考えたりしていました。
 「総合」をただの体験活動や調べて発表だけの学習で終わらせない。一人一人の子どもたちが考える力を伸ばし、力を付けていく「総合」をめざすには、一人一人の子どもたちの内なる意欲を引き出してくことが大切だという「個への支援」の考え方を加茂小では4年前から打ち出していました。(あまり知られていませんが…。)


◆「コーチング」って知ってますか。
  みなさん 「コーチング」ってご存じですか? 
「コーチング」とは、もともとは、スポーツ界の用語のようです。選手が記録を伸ばしたり、技術を上げていくために、適切なアドバイスをする「コーチ」の仕事がコーチングです。それを、相手の自主性を引き出し、目標を達成できるようにするコミュニケーション技術として部下の指導に活用しようとする企業のマネージメントとしてアメリカで発展してきました。ビジネス・コーチングとも言われます。
 そして、この「コーチング」が今注目され、日本でも採用する企業が増えているそうです。与えられた仕事をマニュアル通りにするだけの人材を企業が必要とする時代はもう終わりました。創造性を持ち、自分で考えて行動する自立的な人材が、望まれています。そして、管理職にも、一方的な命令で部下を動かすのではなく、部下の声を聞き、やる気を育てていくことが会社の成長には必要だという考え方をする企業も増えてきています。ビジネスの世界で注目されているこのコーチングこそが、実は、「総合」で必要とされる教師の支援なのです。
 子どもたちのやる気を引き出し、子どもが本来持っている能力や可能性を最大限に発揮させるためのコミュニケーション技術「コーチング」が教師の「個への支援」なのだと最近私は考えています。
 
 自分のテーマが見つけられないでいる子のそばに行き、子どもの内側にある無意識な部分を対話(コミュニケーション)によって、うまく引き出して、意識化させていく。教師が「○○しなさい。」というのではなく、子ども自身が「○○したい!」という気持ちにさせていく。子どもからすると、教師から気づきをもらい、励ましてもらって、自分の力でテーマを見つけ、自分で追求していくことができたという自信を得ます。

◆「プロジェクト学習」と「コーチング」
 私が、「総合」の全体への支援として最も有効な方法だと考えるのは、鈴木敏恵氏の提唱する「未来教育プロジェクト学習」です。このプロジェクト学習は、アメリカのビジネスの世界で用いられていた手法をもとにして、日本の教育の世界にアレンジして導入したものだそうです。
 そして、今、「コーチング」という考え方を導入して、子どもたちの「意欲」と「知力」を引き出すコーチング手法を積極的に「総合」に活かそうとする本が出版されました。(前回も紹介した本です。)
 
未来教育実践モデルシリーズ
  ポートフォリオでプロジェクト学習  国際理解『 国際ボランティア・IT戦略
    〜コーチング手法導入〜 』
    書店発売!   著者:鈴木敏恵    出版:教育同人社   定価:2200円税込

  ※この本の紹介サイト
   http://www.toshie-suzuki.net/kokusai/index.htm

◆「総合」をきちんとしよう!
 今年の10月に中教審答申が示されました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/f_03100701.htm

 「総合的な学習の時間」に関してのポイントは
  ○ 身に付けさせたい力を明確化し、全体計画を作成・実施
  ○ 子どもの実態を踏まえた教師による行き届いた計画的な指導

 「総合」を充実していくことが求められている今、具体的ですぐに実践できる授業のプランや進め方のコツが紹介されている本としてお勧めです。

「総合」に関わるキーワードは…ポートフォリオ、プロジェクト学習、次は「コーチング」です!

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