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    ■「プロジェクト学習奮戦記」(21)   2005.2執筆


◆文科省のスクールミーティングがやってきた!

2月16日 私の勤務する学校(島根・加茂小)で、文科省のスクールミーティングがありました。

※スクールミーティングは、文科省の職員が、教育現場における実際の取組みを見たり、保護者や教職員、子どもたちの生の声を聴くことにより、今後の施策の推進に役立てる目的で現在実施されています。実施状況はこちら。
http://www.mext.go.jp/a_menu/gimukyou/meeting/operation.htm(※リンク切れ)

教職員との意見交換の中で、次のような意見が出されました。

・「主要教科」という言葉あるが、どの教科も大切だと思う。
・少人数指導のために授業数が増え、教員の空き時間も減り、教員に“ゆとり”がない。(みんな忙しく、疲れている)
・総合導入時に、文科省が言っていたことと最近の「学力低下で基礎基本重視」の方針は矛盾するのではないか。
・・・

そんな中、私は文科省の職員方に次のようなことを話しました。

・総合を一生懸命やっているところとそうでないところがある。適当にやっている学校だけを見て評価しないでほしい。がんばっている学校の成果も見てほしい。

・世界トップクラスのフィンランドを見習いたい。授業時数は多くないし、総合学習は11時間もやっている。「少人数指導」をめざすのではなく、少人数学級を進めてほしい。中山大臣にもぜひ視察に行ってもらいたい!

総合の研究開発校で学力向上フロンティア校だった経緯もあって、総合への批判は校内からは出てきませんでした。文科省への注文が多く出された会でした。

 
◆小学3年生「おやつプロジェクト」プレゼンテーション! 

スクールミーティングの授業参観のために文科省の方が歩いている廊下でチームで並んで発表の練習をしている3年生の姿がありました。授業は終わっていたので、放課後残って練習している子どもたちでした。やる気満々の子どもたちでした。
 
★総合の発表は、スキルより心を!

プレゼンの前には、「なぜプレゼンをするのか?」や「聞いてくれる人にどんな気持ちになってほしいか?」をしっかり考える場面をとりました。
「ポートフォリオシート」を使っての学習です。その場面のこつはこちらのサイトで鈴木敏恵先生が動画で語っています。
「未来教育e-ラーニングサイト」
16.プレゼンテーション成功の秘けつを考える。
http://www.mirai-portfolio.net/sogo/sogo.htm

スキルに走るのではなく、その願いを聞く人に届けたい!という心(意志)を強くして、自分たちの伝えたいことをはっきりさせることが重要なのです。

願いや意欲を高めることから、そのための方法(スキル)を考えるのです。ただ一方的に「大きな声ではっきり言いなさい」と教師が言うのと、子ども自身が自分たちのチームの提案をわかってほしいから「大きな声ではっきり言おう!」と自覚するのでは、大きな違いがあるのです。


◆これが実際の子どもたちのテーマと提案!

全15チームの○テーマと→・提案を紹介します。

○小学生に生活習慣病にならないおやつのとり方を教えます!
 →・量や時間をきめて食べよう!
○ガンにならないおやつ(食品)を考えよう!
 →・おやつの表示を見て食べよう。(カロリーをとりすぎないように)
  ・夜は食べない。・分けて食べる。・大人のいうことをきく。
  ・おやつは1日1回 ・ねておやつを食べない。  
○病気にならないおやつについて考えよう!
 →・規則正しく食べる。・体を動かす。・よくかんで食べる。・やさいも。 
○けんこうで体にいいおやつを食べてほしい!
 →みんなが体にいいおやつを食べて、病気にならないでほしい!
  ・おからのホットケーキ ・とうふのケーキ ・あおなのパン
  ・きなこ、ごまだんご  ・やきいも  ・ココア  ・緑茶 など
○体と人のためにカロリーをへらしたい!
 →・体と人のためにカロリーの少なめのおかしを食べてほしい。
○大人と子どものために自分にあった量を教えてあげる!
 →・一日の量を決めて食べる。・お皿に入れて食べよう!  
○小学生のために食べる量を調べる!
 →・お皿に入れる。
  ・たくさんお皿に入れない。
  ・小学生は200Kカロリーだけ
  ・食べ過ぎるとこわい病気になってしまうから、わすれないで。
○時間を決めて食べてほしい!
 →・ごはん前2時間をすぎたらおやつは食べない。もし、おやつを食べたい時は、ごはんを食べ   てから食べる。 
○太らないおやつのとり方を教える!
 →・少しずつおやつを食べてもらう。
○おおぜいの人にカルシウムがいっぱい入ったおやつを食べてほしい!
 →・リンの多いスナックるいや加工食品ばかり食べない!
  ・カルシウムが入っている物を食べよう!
○あまみと塩をたべないようにしよう!
 →・さとうを食べないようにするには、1日3こだけ食べる(20g以下)、バランスよく食べ   る、野菜をたくさん食べてすきになる。
  ・塩をあんまり食べ過ぎないようにするには、一日塩は7gだけ。食事にも塩がふくまれてい   るからとりすぎないようにする。
○幼稚園や小学生が虫歯にならないことを知らせる!
 →・歯みがきをする時大人の歯を特にきれいにしてね。
  ・あまいものじゃないものを食べてほしい。
  ・ねばねばしたものを食べすぎたらいけない。
  ・おく歯をとくにみがいてね。
  ・歯みがきをていねいにしてね。
○小学生のために虫歯のおそろしさを教えよう!
 →・虫歯になるといたいから早めに治療(ちりょう)をしてほしい。
○歯医者に行かないおやつを教えたい!
 →・あまい食べ物はあまり食べないようにしよう!
  ・だらだら食べないようにする!
  ・ジュースのさとうの多いものは少なめよう!   
○虫歯にならないおやつを教える。
→・いっぱいおやつを食べないでほしい!
・やさいをちゃんと食べてほしい!
・毎日歯みがきをしてほしい!
・あまいおやつをあまり食べないでほしい!  

    
◆子どもや保護者の感想

プレゼンテーションは、2月22日の参観日に行いました。

○保護者の感想
・歯みがきの大切さをもっとアピールするとよかったです。質問がたくさん出て、これからもっと 調べることが多い内容ですね。
・歯の磨き方など調べてあってよかったと思います。実演があったらもっとよかったと思います。
・おやつの内容をバランスよく考え、また食べる量を決めておくことが大切だと分かりました。生 活習慣病になるといろいろな病気になるのでならないように心がけることが大切ですね。テンポ よく発表できてわかりやすかったです。
・本やインターネットなどいろいろな物を使って調べてあってよかったです。虫歯になりやすい食 べ物、歯の磨き方など細かく調べてあってよかったです。
・歯を大切にしようという思いがよく伝えられていました。
・クイズ形式を取り入れたり、大きな声で発表できました。
・体によいおやつの種類が紙に書いてまとめてあったのでわかりやすかったです。とうふを使った おやつがよかったです。
・スナック菓子などカロリーが多いので、おやつも親の方が気をつけなければならないと思います。

○児童の感想
◇聞き手に伝わったか?
・伝わったと思う。みんなの感想を聞いてそう思ったからです。
・ちょっと早口だったけど成功した。
・ちょっとつまったけど、みんながわかってくれたので、うれしかったです。

◇もう1回するとしたら具体的にどこをよくするか?
・おやつの時間のことをもっと調べる。
・もっと話すことをふやしたい。
・もうちょっと大きな声で言う。
・○○さんたちのひけつを言うクイズを見習いたい。


◆これからの総合

子どもたちが意欲的に発表していたという感想を保護者の方からもらいました。

ただ調べたことを発表するのではなく、○○したいという願いを持ち、自分たちで考えた具体的な提案を発表する子どもたちはやる気十分。「自ら学び、自ら考える」力がこのプロジェクト学習で育ってきたと思っています。

スクールミーティングで、「中山文科大臣にフィンランドに視察に言ってほしい。」と言った私の深意は、…。

競争で世界一の学力をめざす施策を進めようとする日本とは、全く逆の方策で世界一の学力を維持し続ける国がそこにある。「総合学習」を中心として「生きる力」を育てる国がある。現場の教師のやる気を育て、地方に任せる国がある。それが、フィンランド。

やらせるだけでなく、意欲を育て、意志を大切にしていく教育が一番大切なのは、今の日本の教育行政なのだと強く思う。


※フィンランド教育の参考サイト

フィンランドの教育事情
処方箋は「脱ゆとり」ではない  中嶋博・早大名誉教授(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/elearningschool/topics/news/20050131org00m040050000c.html
(※リンク切れ)
朝日新聞「個人の能力に柔軟対応 PISA好成績のフィンランド 」
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200412190095.html



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