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    ■「プロジェクト学習奮戦記」(4)   2003.8執筆

◆「準備」は活動のエネルギーをつくる時間
 今回は、プロジェクト学習の「テーマ・ゴールの設定」の前の「準備」の段階について、具体的な実践を通して紹介します。

 5年生は、福祉を題材として、実際にボランティアを経験し、現在の問題点に気づき、自分にできることを考え、広めたいことを提案するというプロジェクト学習に取り組んでいます。2学期からのテーマ追求のために、1学期は、自分のテーマを見つけるための体験をじっくり行いました。

 福祉に対して無意識な子どもたちに対して、福祉の現状について知り、(よし、取り組んでみよう!)いう意欲を持たせていくには、やはり直接の体験が必要です。そして、ただ体験するだけでなく、考えることが大切です。体験の中で感じたことや考えたことをはっきりさせたり、みんなで共有する時間をとりました。すると、子どもたちは、(福祉って何だろう?)と深く考えるようになりました。今まで気づかなかったことを意識するようになったのです。

◆ほったらかしでは価値ある課題は生まれない
 体験させてほったらかしではそうはいきません。方向づけを教師の方でしっかりしていくことがこの準備の段階では必要なのです。つまり、課題設定のためには、ただ体験をするだけではなく、子ども達の意識の流れを大切にした計画的・意図的な体験をしたり、体験の振り返りの場を設定したりすることが大切なのです。

 以下実際の具体的な活動の流れです。

1.お年寄りさんについて考え、今後の見通しを持つ。(2時間)
・テーマについて知る。
・お年寄りさんについて考える。

2.老人ホーム等の見学(お年寄りさんとの交流)(3時間)
・施設見学、デイサービス体験 
※3カ所の施設での体験・交流

3.自分がお年寄りさんのためにしたいことを考える。(1時間)
(1)見学や体験の感想を発表する。
(2)お年寄りさんの気持ちを考える。
(3)社会福祉協議会の方の話を聞く。(GT)
(4)施設で働く方の話を聞く。(ビデオ)
(5)自分がやってみたいことを考える。


4.訪問の計画を立て、準備をする。(3時間)
・対象別グループを作り、計画を立て準備をする。

5.グループ別に実践する。
・一緒にゲームをする、プレゼントを作って渡す、施設で食事や介護のお世話↓等
6.活動を振り返りながら、自分の追求したいテーマについて考える。

◆体験は2段階
 ご覧の通り、まず、テーマについてオリエンテーションでしっかり考えてから、学年で共通の体験を3回行いました。(準備は教師や施設の方で)そして、最初の体験を元に今度は自分がしてあげたいことを決めて、グループを作って準備し、実践を行いました。(今度は、子どもたちがアポをとり、施設の方等と事前に相談したりしながら)自分たちに任される活動を通して子どもたちは、
意欲的に計画を立てたり、高齢者の方の立場で考えことの大切さに気づくことができました。1回目が与えられる体験ならば、2回目は子どもたち主体で考えた体験です。この2段階の体験で、福祉の現実に気づくきながら、やり遂げた満足感を持ち、もっとやってみようという意欲を持たせることができたと思います。

◆福祉のプロにも相談して
 この福祉の学習は、計画段階から、町の福祉担当者と相談をしていました。学校のねらいについてお話をし、どういう体験プログラムを組んだらいいか相談して授業プランを作りました。関係機関や施設との連携というのは、「総合」ではかかせません。教師と同じように子どもに関わってくださる施設の方も授業のねらいをはっきり知っている必要があります。
 夏休み中に施設へ行ってボランティアを早速している子どもたちもでてきています。

 子どもたちは毎時間の活動後、活動で気づいたことや、自分の成長について自己評価した記録を、収集した資料とともにポートフォリオに蓄積しています。こうした個々の振り返りも課題設定に役立っています。


 もうすぐ2学期がスタート。加茂小の5年生の「総合」も再開します。蓄えたエネルギーを使って、いよいよ「テーマ・ゴール」の設定です。

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