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    ■「プロジェクト学習奮戦記」(14)   2004.6執筆

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|評価は成長へのエネルギー  |
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◆もうすぐ通信票 いよいよ7月。通信票の季節ですね。子どもたちの成績をつけるのに忙しい 毎日でしょうか。 ところで、通信票ってどんな気持ちで作っていらっしゃいますか。 受け取る子どもたちの気持ちを考えながら、きちんと今の状況を伝えようと 苦心されていることでしょう。

今回は、ポートフォリオ評価に関わって、通信票としての「成長報告書」や 「成長報告会」についてのお話です。

◆総合学習の通信票「成長報告書」

うちの学校(島根・加茂小)では、通常の教科等の通信票とは別に、「総合 的な学習」の通信票を作成しています。学期毎に 単元の活動の「振り返り カード」をこの通信票に貼り付ける形式で作成しており、1年間を終えると、 全部の単元の評価が綴られることになります。

評価の観点は、「自分で表現する力」「自分で考える力」「人と関わる力」 として、学年別の観点別の評価基準を手がかりに、ポートフォリオ評価を大 切にしながら評価をしています。

そして、未来教育プロジェクト学習の手法を取り入れた学習を進めるととも に、子どもの"成長の様子を知らせる"通信票として、自己評価や他者からの 評価など多角的な視点から、児童の成長を認めていくようにしているところ に特色があります。 この「振り返りカード」は、何をしたかを具体的に示す「具体的な活動」と 評価の観点をもとにした「自己評価」、そして、「学校からの評価」を文章 等で記述しています。そして、子どもが家庭にポートフォリオを持ち帰り、 子ども自身の説明を聞いて「保護者の評価(感想)」を記入してもらうよう にしています。

未来教育プロジェクト学習の最後の場面で、活動を通して自分がどれだけ成 長したかを考える「成長エントリー」の学習を生かして、活動の反省を子ど も自身が記入するようにしています。

自己評価では、自分で考えた観点も取 り入れるようにしています。 この「総合的な学習」版の通信票には、育てたい力やポートフォリオ評価に ついて説明も記入しています。

※「新通信票」の紹介サイト 梶原編集長さん作成のサイトです。 鈴木敏恵 未来教育ナレッジ全集 プロジェクト学習・ポートフォリオ活用 http://www.suzukitoshie.net/2001/index.html

◆人が成長するとき  

人が成長するは、どんなときでしょう。
・自分で「成長した」と自覚したとき
・人から「成長した」と評価されたとき 他人から認められ、自分で自覚できて、自信がついたときに人は成長します。 「褒める」という行為は、なかなか難しいものですが、認め合うことは勇気 を与えます。

他人から理解され、肯定的に認められると(やればできる!) (自分ってなかなかいいぞ!)という思いが湧いてきます。
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|自己肯定感が人を前向きに生きるためのエネルギー  |
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  「よかった。」だけでなく、具体的に何がよいか言ってもらったり、「もっと ○○をしたらいい。」というアドバイスをもらえるとうれしいのです。

◆“成長報告会” 〜研修医プレゼンテーション〜

先日 このMMでもお馴染みの鈴木敏恵先生の指導による「研修医プレゼンテー ション」に参加しました。

<出雲市民病院臨床研修2004>
 これが私たち研修医のポートフォリオです!
    知の共有プレゼンテーション
          
臨床研修の区切りとして、研修医が学んだことを発表し合う場でした。

今年4月から臨床研修が義務づけられ、医師としての2年間の研修をポートフ ォリオを用いて取り組む実践を展開中です。プロとして医師の基礎を身につけ, 意欲的,誠実に,前向きにやりぬく力をつかむことが目標です。

最初の導入期 の2ヶ月を終え、自分の得たものを指導医や看護師さん、患者さんなど地域の 方の前でプレゼンするという発表会でした。 大学を卒業し、国家試験に合格した医師のたまご(正確にはひよこ?)たちに とっては、社会人としてのスタートで、職場での人間関係にも気を遣い、きっ と緊張の毎日なのでしょう。

それは、教師の場合にも似ているのでしょうが、 命を預かる大切な仕事を毎日こなしていくそのプレッシャーは、もっと大きい と思います。 プレゼンの内容について鈴木先生と相談している研修医さんの姿を見ながら、 これまでの大変な2ヶ月を想像していました。これまでの忙しい毎日を振り返 り、自分の得たものを他へ共有しようというこのプレゼンは、とても有意義な ものでした。

◆ある研修医さんの成長
ある研修医さんに「成長報告書」を見せてもらいました。

◇成長したことベスト3
・患者さんと話しやすくなった
・看護業務の大切さが分かった
・患者さんの問題を考えられるようになった

◇ここから得たことを現実にどう生かしますか
・「これからどんな病院に行っても全ての患者さんや看護師さんに対して活かします。看護業務についてはもっと勉強して患者様が何かを訴えられたら(体 位変換、吸痰など)できることは自分でやれるようになりたいです。」

☆提案  看護業務もできる医師に!
 医師としてのスキルの向上とともに看護師の仕事も覚えていきたい。  「車いすへの移動」「体位変換」「吸痰」 この成長報告書は、指導する医師の先生たちや看護師さんからのコメントが記入され、院長さんのコメントや修了の印も押されたものでした。患者さんから のコメントカードも一緒になっていました。

『患者様の事情や思いを尊重しながら医療を進めていく姿勢 先生の優れてい るところだと思います。涙を見せながらもずいぶんたくましく成長されました ね。OKです。卒業です。(先輩の医師から)』

◆評価は成長へのエネルギー
プレゼンを終えて研修医さんの満足した顔、「いいお医者さんになってくださ い。」と患者さんに言われてうれしそうな顔、プレゼンの模造紙に貼ってもら ったコメントカードをうれしそうに眺める顔、成長報告書(通信票)をそっと 眺めて、見せ合う姿は子どもと同じ。

「セレブレートタイム」で研修期間のス ナップやプレゼンの写真が写るスクリーンを見つめるやさしい眼差し。

“人間味あふれる医師になろう!”そう決心した研修医さんたちの顔はみんな 輝いて見えました。

評価は成長へのエネルギー。研修医さんだけでなく、研修医さんを支える人た ちにとってもこのプレゼンテーションは、自分たちの取り組みの評価につなが るものでした。みんなが成長へのエネルギーを得ることができました。
研修医のみなさんが成長する場を直接目にすることができたことは、私にとっ て有意義な経験でした。

★関連リンク

・鈴木敏恵・研修医ポートフォリオ評価 http://www.igaku-portfolio.net/  
※今回のプレゼンの様子を近日中にアップします。(私が作っています)

・ポートフォリオを利用した研修医による 「研修の成果プレゼンテーション」 http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2563dir/n2563_12.htm#00
・ポートフォリオで変わる医学教育
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2544dir/n2544_01.htm#s
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