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    ■「プロジェクト学習奮戦記」(12)   2004.4執筆

◆学力世界一フィンランドは以前は“落ちこぼれ”

日本と同じくらいの面積で、人口500万人。日本で言えば一つの県という感じ。この北欧の小国フィンランドは、つい十年前には高い失業率と深刻な経済不況に陥っていました。しかし、最近は元気!…。世界の“落ちこぼれ”がたった10年で“優等生”に変身!!その訳は…。

マイクロソフトのウィンドウズに対抗できるオープンソースのOSリナックスが生まれた国であり、携帯電話のシェア世界一のノキアもこの国が本拠地。北欧の森と湖の国フィンランドは、短期間でハイテクの国となり経済復興を成し遂げました。その成功の秘訣が教育改革だと言われています。OECDによる世界の15歳児の学力テスト調査で、世界第一位となり注目されています。昨年NHKで世界の学力比較について取り上げた番組(「世界潮流」)もありました。それによると次のような状況です。

◆教育にお金をかけ、未来を託したフィンランド

不況に喘いでいたフィンランドは、国の未来をかけ、国の再建を託す子どもちを育てる「教育改革」に国家予算を注ぎ込んだのです。現在の日本のような中央集権型だったのを改め、地方分権化を図っていきました。地方や学校現場に裁量権や決定権を与え、自由にカリキュラムを作ったりできるようにし、国が押しつける画一的な教育をやめたのです。それにより、均一的な教育をめざすのではなく、地方や各学校毎に子どもたち一人一人の実情に応じて個々の能力を伸ばす教育が行われるようになりました。

◆日本の教育も実は…

実は、日本も世の中の地方分権化の流れの中で、教育の地方分権化を進めてきていました。教科書がなく、各学校でねらいや内容を決めてよい「自ら学び自ら考える学習<総合的な学習の時間>」を創設したのもその流れによるものです。そして、最近では、3月の中教審答申では「地域運営学校」創設という提言もなされています。大きな流れとして地方分権化は進んでいきそうなのですが、日本の場合は、どうも国のお役所(モンカショウ?)は、地方や学校にいろいろと口を出したがるようです。「ゆとり教育」と言っていたのに「学びのすすめ」や「確かな学力」と言い出して自己矛盾に苦しんでいます。どうも相反する2つを一緒にしてお役所が言うので、矛盾の嵐が吹き荒れています。「基礎基本の充実」と「個性を生かす教育」。「教科指導の充実」と「総合学習の工夫」。(授業の方法は違うでしょ。両方するの?)


◆フィンランドの学力向上は小規模学校で

フィンランドは日本に比べれば、人口のわりに広い国土で、比較的小規模の学校が多く、それぞれが少人数の学級です。(約17人ぐらい。日本は30人以上。)日本の教育が、校舎や体育館等の施設にお金をかけているのに対して、フィンランドは、授業で使う教室の施設や機器に十分な予算を注いでいます。
言うなれば、小さくて小回りのきく軽自動車に性能のいいエンジンを積んでいるのがフィンランド。でかくて見栄えのよい大型車に軽自動車以下のエンジンしか積んでいないのが日本か(そのくせ、ちゃんと決まった道を早く走れと言ったり、ガソリンを無駄にするなといつも言っている。)

◆フィンランドの教師は「学び続ける先生」

教育環境の違いの中で、大きいのは、実は先生の問題。フィンランドでは教師を育てることにも国が取り組んでいます。教師になるには、大学院にまで行って、専門の教育を受けなければならないし、教師の道も狭き門です。さらに日本と違うのは、現役教員にも大学と同じような研修があり、再教育されるシステムになっています。先生になってからもずっと優れた教育実践が行えるように教育を受け続けるのです。つまり、フィンランドでは授業の質を上げるためにお金をかけているのです。

◆プロジェクト学習が主流!

フィンランドが学力世界一になったのは、知識を詰め込むのではなく、自ら学ぶ姿勢を身につけさせることを重視した教育に取り組んだからでした。選択の授業やプロジェクト学習を多く取り入れたのです。教科書でなく独自教材を使ったり、グループで課題を解決していく学習が多く取り入れられているようです。教師が一方的に教える教育ではなく、決められた答えを見つける勉強でもありません。子どもたちが学ぶという意志を持った授業をめざしているのです。

フィンランドでは地方分権の教育で育った人材が地方の中小企業を元気にし、それが国の経済を立て直したのです。

◆学力向上は教師の指導力向上がカギ

フィンランドの教育制度をそのまま日本に持ち込んで成功するとは思えませんが、日本の教育改革のためのヒントになると考えています。特に学力向上の面ではお手本になると思っています。

「子どもたち一人一人が学びの主体として大切にされ、学ぶ意欲を持ち、適切に評価され、自分に自信を持って学習に取り組めるような指導」がなされれば、必ず学力は向上すると私は信じています。それは、やらされる勉強では叶わないのです。そして、それは、指導する側、教師の指導力に負うところが多きいのです。

日本の子どもたちの学力を向上させるには、指導する教師の指導力、技量をアップさせることが必要です。それには、子どもと同じように、「教師が教育者として大切にされ、教える意欲を持ち、その指導力が適切に評価され、自分の教師としての仕事に自信を持って教育に取り組めるような体制」が必要だと考えます。
名もなき優れた教師が適切に評価される教育の仕組みが求められています。

教師の研修にも、プロジェクト学習やポートフォリオ評価の手法や考え方が必要だと考えています。

★3年担任奮戦中

今年度は4年ぶりに学級担任になり、小学3年生を担任しています。これまでの専科の研究主任や教務主任の時とは使う脳みそが違うようです。学級の子どもたちと接しながら、子どもたちに教えられることが多い新鮮な毎日です。今年度は3年生との活動を中心に紹介させてもらいます。
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