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■「プロジェクト志向でいこう!」(8)    2005.12月執筆


前号の続きです。

◆ある情報教育の授業を見て

前号で、情報教育に関する授業研究会の指導講師役になったというお話をしました。
その授業は、ニュース番組を作るという国語の授業でした。

子どもたちは、意欲的に活動していました。ニュース番組をつくるために、グループで取材して、ビデオとして作品を作るという活動をしていました。

ニュースを作る際のポイントや大切な点を学習し、子どもたちが協力して実際の番組を作るグループの活動と全体でのそのビデオの視聴の授業場面でした。

授業者の先生は、情報教育とは、“メディアを使う”という意識が強かったようで、本来の教科(国語)の授業のねらいを達成するという大前提が少し弱くなってしまったように感じました。

また、コミュニケーションの大切なポイントである「伝える相手意識」や「伝えたい自分の思いや考え」がどうもはっきりしていないように感じました。ビデオ番組は、誰に何を伝えるためのものかが明確になっていないのです。「校内で給食のお昼の放送に流す…」のだそうです。(う〜ん。大事なものを忘れていませんか?)

授業の後半部分は、全体で、あるグループのビデオの視聴をして、よい点を見つけたり、改善点を話し合う場面でした。子どもたちは、気づいた点を大勢の参観者の前でも堂々と発表します。(いいぞ!)

でも、授業者の先生もどんどん自分の考えを発表します。(おいおい。)

「話し合い」の場面だったのに、「発表者と教師だけの話」になってしまいました。(先生、しゃべりすぎ!大事なものを忘れていませんか?)


◆授業から思ったこと

「活動すれども、学習がない。」総合学習が始まってそう指摘された授業が多くありました。(今も…?)体験や活動中心で、子どもたちは意欲的なのだけど、終わってから「子どもの力がついたか?」と言われても、Yes!と言えない教師。「数年後の人生に役立つ…」と平気で答える教師。

どんな力をつけたいかを明確にしないで、活動してしまう。活動する前に、どんな力を育てるか考えないから、子どもたちの目的意識は低く、「楽しかった」で終わってしまう。(大事なものを忘れていませんか?)

頭を使って考えたり、「あきらめないでがんばろう!」という意欲を生み出すポイントは、自分ごととして課題を意識させること。課題達成時のイメージをはっきりさせておくこと。つまり、プロジェクト学習のテーマとゴールの意識化なのだ。

(テーマとゴールの設定がこの国語の授業でもポイントだったなあ。)


◆来年の教育界は?

今年ももう少しで終わりですね。2006年の教育界で注目されそうなことを考えてみます。

1.教員評価スタート
いよいよ4月から本格実施です。

(これまでこの問題について書いてきました。ちょっと復習)
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※文科省のサイトから
<これまでの経緯>
○ 教員の評価については、昭和30年代の日教組による勤評闘争(勤務評定による人事管理に反対し勤評の実施に反対する運動)があり、その後も学校現場の根強い横並び意識もあったため、適切な勤務評定が行われず、評定結果の人事や給与への活用は行われていなかったのが実態。

○ しかし、信頼される学校づくりのため評価と公開がより一層進められる中で、校長や教育委員会が、個々の教員の勤務の状況を詳細に把握し、それに基づいて、学校の組織体制を整えること、研修等によって資質向上を図ることと優れた勤務成績を挙げている者にはそれに応じた処遇を行うことが重要
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「教員の一律処遇からやる気と能力に応じて処遇するシステムへの転換を進める」というねらいで導入される教職員評価で、本当に学校はよくなるのだろうか…?


★勤務成績に応じた給料を出せば、教育はよくなる?

がんばっている先生たちを正しく評価することは必要なことです。でも形式的な教員評価では、やる気と能力を育てることはできないと考えます。

(大事なものを忘れていませんか?)

人材育成という面での具体的な取り組みが今後必要だと思います。


2.全国学力テスト
もうすぐ始まります。
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文科省は、従来ごく一部の小・中学校に限定していた「教育課程実施状況調査」のペーパーテストを、2002年から数十万人規模に拡大するとともに、高校生も対象に加えた。2007年度からは新たに小・中学生対象の「全国的な学力調査」を実施することを目指しており、先ごろ検討会議を発足させた。
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「学力向上」の名のもとに、何だか「子どものおしりを叩け!」と教師の背中を押されている感じがします。

★テストをすれば学力が上がるの?

(大事なものを忘れていませんか?)

教師のやる気を伸ばし、子どもたちが考える授業を進めていくことが、本当の「学力向上」につながるのだと私は思います。


3.「ゼロ・トレランス」導入?
「ゼロ・トレランス」って何でしょう。

http://www.mainichi.co.jp/life/kyoiku/edumail/archive/gyousei/200510/14-02.htm

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文科省は、アメリカの学校でおこなわれている「ゼロ・トレランス方式」の導入について検討を始めたそうです。
 「ゼロ・トレランス」とは、服装・問題行動やそれらに関する対応といった、規律や懲戒規定を学校側が事前に明示し、違反者には個別の事情に関係なしに例外なく処分する指導方法だということです。(ゼロ・トレランス[zero tolerance]=直訳すると「寛容さゼロ」という意味)
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★規則を厳しくすれば、学校はよくなるの?

(大事なものを忘れていませんか?)

ひょっとして、「教員評価」や「全国学力テスト」もゼロ・トレランス?


『大切なことは何のか』ものごとの本質を見失わないようにいたいと思います。


では、皆様 よいお年を!

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