T 学校としてのカリキュラムをどう創る 〜学校の基準と学年の主体性を両立!

(1) 学校のカリキュラムができない?

 本校では、総合的な学習について2年前から本格的に研究実践に取り組んできた。1年目は担任が取り組みやすいと考えた単元を取り上げた学年中心の年間計画であった。各担任が試行錯誤しながらも意欲的に取り組んだが、学習のねらいが曖昧であったり、学習の深まりが足りなかった単元もでてきた。

 そこで、2年目は、子どもたちにどんな力を身に付けていけばよいかを考えていく必要性について共通理解を図り、児童の実態に基づいて考えた「育てたい力」を視点として、各学年でそれを具体化して、系統性のある年間計画を考えていくようにした。取り上げる内容については学年で考え、「育てたい力」を明確にしながらも、それぞれの担任の主体性を生かした実践が多く見られた。自分なりの総合的な学習に対するイメージをつかみ、自信を持つ教師も増えてきた。

 しかし、これまでの年間活動計画では、各学年が中心となってそれぞれでカリキュラム作りを進めてきた面が強く、各学年の関連が弱かったり、似かよった内容になったりして学校全体の系統性や体系化ができていないという反省が残った。そこで、3学期の研究職員会で、学年単位で開発してきた単元を、学校全体として、テーマ(単元)の系統性を持たせ、各学年や個人で開発してきた単元を中心に、学校全体計画を作成するという話し合いを行った。

 すると、各学年に位置付ける単元を何にするか、学校としての基準をどうするかの協議の中で教師間で対立する意見や思いが噴出した。
総合的な学習で(やりたいことができるぞ)と考える教師にとっては、学校として学年の単元を決めてほしくないという思いがあり、総合的な学習に対して(何をしたらいいのか不安)だと考える教師からは、内容についても具体的に決めてほしいという意見が出された。教師みんなが納得できるような学校としてのカリキュラムをどう作っていけばよいかというこの課題に対して次のように取り組んだ。


(2) 問題解決のポイント


お互いの思いや考えを出し合い、本音で語れる場を設定して、共通理解できることを順に考えて、協議を重ね、基準作りや具体的な単元の検討を共同作業として行う必要があると考えた。
 まず、学年独自の計画の限界について気づき、学校としてのカリキュラムの必要性について共通理解を図るとともに、だれもが納得できる単元設定の基準を考えていくことにした。更に、これまでの各学年の実践を振り返り、各単元毎の評価を行い、各学年に位置付ける単元について検討していった。

○基準の確認・検討
・これまでの経緯から学年としての主体性も大切にし、担任の考えや願いを反映できるものにする。
・「育てたい力」や「授業場面でめざす子ども像」を基本とし、地域の人や体験を生かした活動を取り入れる。
  ・単元設定では、スコープとして「価値ある体験」を、シークエンスとして「主体的な学びの力」を位置付け、基準とする。
・単元の扱い方や考慮したいこと等を留意点としてまとめた。3年は「総合」の学び方を知り、短めな単元」、4年は、「自分なりに試行錯誤し、長めの単元」、5年は「追  究方法を求め、短めな単元」、6年は、「自分で見つけ 表現し、個人追究学習も」等。
・単元設定の条件(単元の評価の観点)として「活動の広がりや学びの深まり」「発展性」「意欲」「地域のよさ」「双方向性」を取り上げる。

○これまでの各単元の評価と学年に位置付ける単元の設定
・単元設定の条件をもとにこれまでの実践を各学年で振り返り、評価する。
  ・単元設定の基準をもとに実践の評価を考慮して具体的な単元を設定する。
・学校として位置付けた「おすすめ単元」の他は、各学年で単元を考える。

(3) まとめ

 教師は自分の学年の「総合」をどうするかに関心がいきがちであるが、学校としての基準作りを共同作業で行うことで、学校として総合的な学習で子どもを育てていくという共通理解を図ることができた。教師の主体性も加味した計画にすることで誰もが意欲的に取り組めるカリキュラムにできた。年度末には、カリキュラム評価を行い学校全体計画「加茂プラン」をよりよいものにしていきたい。