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■「プロジェクト志向でいこう!」(25)   2008年1月執筆


◆新春に想う 〜これからの教育界は

 平成20年1月8日。私の学校は、今日から3学期です。

 まだ、学校の方は、平成19年度のままで、3学期がスタートしたところですが、新しい年を迎え、気分一新で新たなことに取り組みたい気分です。

 さて、平成20年はどんな年になるのでしょうか?これからの予想図を描く前に、昨年のことを振り返ってみましょう。

 あっという間に過ぎてしまった感のある平成19年。1年という短命だった安倍内閣の時代は、歴史の上ではすぐに忘れ去られてしまいそうですが、教育界に与えた影響は実は大きい!と言えます。「教育再生」の名の下に行われた“改革”は、これからどんな影響を与えるのかを考えてみます。


◆誰のための改革か?

 平成18年12月に教育基本法が改正され、続いて平成19年6月に関連する教育三法(学校教育法、地方教育行政法、教員免許法)が、与党の強行採決により成立しました。
 その後7月の参議院選挙で、自民党は歴史的大敗。衆参のねじれ現象が生じ、与党の強行採決が使える状況ではなくなりました。

 安倍内閣の「教育再生」は、短期間にあっという間に法制化され、形が作られてしまった感があります。

 教育改革は必要です。現状のままでいいなんて思っていません。日本中の学校が元気になり、活性化する。そうあるべきです。教育改革は、当事者である“子どもたち”や“親”“教師”のために必要です。

 しかしながら、今の教育改革は、当事者をほったらかしにして、国(文科省)が自分たちの都合のよいようにトップダウン式に“改革”しようとする意図が見え隠れしています。


◆校長−副校長−教頭−主幹教諭−指導教諭−主任−教諭

 学校教育法の改正で、副校長、主幹教諭、指導教諭という職制が導入されました。(正確には、導入してもよいとされました。)職階ですので、給料も少しずつ違うことになります。管理が強まっていく体制になるし、これまでの学校現場がいわゆる「鍋ぶた」式で、校長・教頭以外は、みんな横並びだった体制が変わっていくことになります。
民間の会社みたいな感じになるのでしょうか。

 これで、先生たちの競争意識がアップするのでしょうか。いい教育活動が展開されていくのでしょうか。子どものためにがんばる先生たちのやる気や元気は、育っていくのでしょうか。チームワークはよくならない気がしますが・・・。
 子どもたちの立場では、授業を持たない先生や授業を少ししかしない先生が増えることになります。


◆免許更新制で教師力アップなるか?
 
 教員免許法改正によって、10年毎に免許更新講習を受けて、審査を受けて免許が更新される制度がスタートすることになりました。(平成21年4月から開始。現職にも適用の方向です。詳細は今年中に明らかになりそう・・・)

 もともとは、不適格教員を排除するために導入が検討された制度のようですが、ひどい先生は10年も待たずにやめてもらいたい。(と思いますが・・・)

 どんな審査をするんだろう?講習中の先生の替わりは?マンネリ化したサラリーマン教師(こんな言い方がまだあるのかな?)にとっては、刺激になるのかもしれないが、処分や排除の方向では、多額の経費と時間をかけても教師の質の向上は期待できないだろうと思います。

 教師自身が専門性を高め、やる気をもち、研修をして教師力をアップしていくには、仕方なしの“運転免許のような更新”ではだめだろう。

 自分自身で成長しようと願う教師が自主的に研修できる時間と場を作ろうとなぜしないんだろう。


◆全国一斉学力テストを全員が受ける理由は?

 平成19年4月24日。全国の小学6年生と中学3年生のほぼすべてに当たる230万人が全国一斉学力テストを受けました。77億円の経費をかけて・・・。
今年は4月22日に実施予定です。

 なぜこれまでのサンプル調査ではなく、全員が受ける必要があるのでしょうか。多くの人が感じているように、学校間の競争をさせるためですよね。「学校間の序列化や過度な競争につながらないように配慮」するように文科省は求めています。が、そうはいかないようです。

 学力テストで「指さし」事件を生み、弊害も見え隠れ・・・。

 文科省のねらう「児童・生徒の学力・学習状況を把握・分析することにより、教育及び教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」ためには、事前の練習や準備をしない抽出の方がより現実に近い正確なものになると思うのですが・・・。

 学力差(テスト学力)を生む原因は何なのかを積極的に検証することも実はしていない・・・。塾との関係は?40人学級と少人数の学級の差は?少人数指導の成果は?学校の施設環境は?

 やっぱり、地域や学校間の競争をさせることがテストのねらい・・・?


◆競争で学力は育たない!

 小泉政権・安倍政権によって、「聖域なき構造改革」の下に、教育界にも市場原理主義が持ち込まれ、「競争」による格差が広がってきているのは周知の事実。お金のある恵まれた家庭の子どもたちがより質の高い教育を受けられる時代になってきました。
所得格差による学力の二極化は、この6年間に進んでしまいました。


(今回は、どうも“反政府”的な文章になってしまいました。)


 最後に、日本の教育はどうすべきかを考えていくと・・・やっぱりめざすはフィンランドか。

※厚生労働省のサイトから見つけました。


厚生労働省報告書〜働く者の生活と社会のあり方に関する懇談会
「転換期の社会と働く者の生活―「人間開花社会」の実現に向けてー」から引用
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/07/s0720-1c.html#4
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○  フィンランドの教育改革

 フィンランドでは、90年代に深刻な不況が続く中、今後のポスト工業化社会を支えるスモールビジネスの担い手を養成するという観点から、1994年、アホ政権が大胆な教育システム改革を実行した。
 そのポイントは、(1)教師の質の確保(修士号取得を義務付け)、(2)教師への大幅権限委譲(教材・カリキュラム編成、授業内容等における教師の裁量拡大)、(3)授業方式からテーマ学習方式への転換及び少人数教育の徹底である。
 これにより、生徒個人個人が、小グループの中で、直接教師の指導を受けつつ、与えられた課題について自ら調べ、討論し、考え方をまとめてプレゼンテーションすることを通して、知識を応用し、解決する力が養成されることにつながっている。
 こうした改革の成果は、OECDによるPISA調査(知識や技能を実生活の様々な課題にどの程度活用できるかを測定する調査)においても現れており、特にテキストを理解し、応用する力を測る読解力分野で、フィンランドは、特に群を抜いた成績を収めており、欧州各国から注目を集めている。
 こうした教育のあり方は、生涯にわたって学び続ける姿勢の確立にも資するものであり、絶えず能力開発・向上を行うことにより付加価値を生み出していく今後のポスト工業化社会における、育成のあり方のモデルを示していると考えられる。
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21世紀に必要な学力は、「自分で考える力」。これからの社会で求められるのは、与えられた仕事をマニュアル通りこなす力ではもうないのです。


「学力向上」を言う前に、これから必要な学力とは何なのか考える機会をもちたいものです。




 
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