「総合とインターネット」                    10  11  12 


  ■「総合とインターネット」(7)  2002.9執筆

 今回は数年前に取り組んだインターネットを通して交流しながら国際理解を深める活動を「総合的な学習の時間」で実践してきた事例を紹介します。

◆外国の小学生との共同学習「英語でのホームページ作り」◆
 英語での交流を通して、コラボレーションしながら、共同のホームページ(英語)を作っていく活動を行った。英語という言葉の壁はあるものの、国際的な共同学習を通して、コラボレーションする力を身につけたり、相手の文化に触れたり、自分たちの文化を再認識したり、調べたことをホームページとしてまとめるという表現力を育てる機会になると考えた。
●単元のねらい
・インターネットを通して、アメリカやオーストラリアの文化に触れ、日本と比較して他国のよさや日本(ふるさと)のよさを知る。
・共同作品を作る活動を通して、協力しようとする気持ちや完成したときの満足感を持ち、共存の心を育てる。

相手とのやりとりや作成するページが英語であったので、実際の作業にあたっては、翻訳ソフトを使ったり、担当者が辞書をフルに活用したり、学校に来てくださる町の国際交流員さんに手伝ってもらったりしながら取り組んだ。

◆実際の活動の様子◆  
(1)相手の国を知ろう
 まず、相手校のアメリカとオーストラリアの国について調べる活動を行った。町の国際交流員さんが当時はアメリカの人、その前はオーストラリアの人であり、子どもたちはそれぞれの国の知識を少しは持ってはいたが、これから交流する相手が同い年の小学生ということで意欲的に調べていった。図書室の本で調べたり、国を紹介するビデオを見たり、国際交流員さんにアメリカの話を聞いたり、担任がオーストラリアへ行った時の写真を見たりした。また、インターネットに接続してそれぞれの国のライブカメラを見たりした。「オーストラリアとは時差が1時間しかない。」「アメリカは今、夜なんだ。」と世界を実感したりした。また、子どもたちに相手の意識を常に持たせたいと考え、教室には、世界地図とアメリカとオーストラリアの時刻を示す時計を掲示しておいた。
(2)自己紹介のページを作ろう
 担当教師間の相談で、まず、お互いに写真入りの自己紹介のページを作ることとし、互いに制作にかかった。チームリーダーのオーストラリアから作ったページを送ってもらい、それを見る活動を行った。プリントして掲示するとともに英文を翻訳して紹介した。アメリカのページもでき、それらを見ながら、学級の子どもたち一人ひとりが自己紹介を日本語で作っていった。自分の趣味や相手への質問、相手からの質問の答えなどを内容として盛り込んだ。そして、英語版の自己紹介ページを作成した。          
(3)小テーマを決めよう
 共同研究のテーマは、「Year of the Oceans」とし、海と関わったいろいろな内容を調べていくこととなった。海をテーマとしてどんなことを調べたり、比べたりしたらよいかを話し合っていった。そして、日本側の考えをチームの掲示板やメーリングリストに載せて(英語に翻訳して)、インターネットを通して、話し合いを進めていった。そして、学級で自分はどのテーマを調べて、作品を作っていくかを相談した。3〜4人ずつのグループで分担していくことになった。
(4)調査や取材をしよう。
 まず、小テーマ毎に何をどのようにして調べるのか、調べたことをどう表現していくのかを話し合った。図書室の本で調べたり、インターネットのホームページを探したり、地域の人に聞いたりして調べていった。そして、どのように表現したらよいか考え、絵を描いたり、写真を使ったりするなど工夫していった。また、担任と相談してクイズ形式にしたり、絵が次々変わるようなページを作ったりするなど表現の工夫もしていった。
(5)ホームページ作成
 実際のホームページの作成にあたっては、作成ソフト(ホームページビルダー)を利用し、子どもたちの手で行っていった。他にお絵かきソフト(キッドピクス)を使ったり、デジカメ、スキャナーを操作したりしていったが、画像処理に関しては、担任の方で行った。また、ホームページは、子どもたちは日本語で作成し、それを担任の方で翻訳ソフトを使ったりしながら、英文に翻訳していった。出来上がった作品(ホームページ)についてインターネット上の作業ディレクトリーに載せて、お互いに見て、情報交換をしながら、作業を進めていくことができた。英文の間違いなども相手からそのたびにして指摘してもらったり、修正してもらったりして共同で作品を作ることができた。

◆作成の過程◆
 交流のやりとりが英語であったために「翻訳」という作業を担任がしなければならなかったが、作品についての意見交流で、感想や質問をやりとりしたりすることもできた。また、写真や絵を多くすることでイメージとしてとらえやすくなり、子どもたち自身が意欲的に取り組むことができた。
 また、相手の国のいろいろなことを知るとともに日本にはどんなものがあるかを調べ、紹介してあげようという気持ちを持つことができた。「海の探検家」チームは、アメリカやオーストラリアのコロンブスやクックに対して、日本の探検家は誰だろうと調べ、苦心して冒険家「植村直己」を取り上げた。「海の生き物」チームは、国語で学習した「サケ」を取り上げて紹介した。アメリカの大西洋側にもサケがいることを教えてもらい、新しい発見をすることができた。 
「海の昔話」チームの中で、創作話を作り、それをリレーでアメリカ、オーストラリアと続けていくというプランを立てたが、実際には、相手国から続きができてこなくて、うまく思いが伝わらないことも生じてしまった。
 
◆子どもたちの感想◆
・ホームページを作った時は、いろいろな絵を描いたりして工夫した。また、外国の小学生の人の絵も見ることができておもしろかった。
・インターネットを使って他の国の人と交流できてよかった。
・世界の同じ年の小学生と一緒にHPを作ることができてうれしかった。
・英語はよく分からなかったけど、これから勉強してみたくなった。

◆まとめ◆
 インターネットを通して世界をより身近に感じてほしい。外国の小学生と実際に交流することで、言葉や文化や違いを肌で感じながら、協力して共同作品を作り上げる経験をさせたいと考えていた。実際に活動に入ってみると、担任の方が翻訳作業に追われて、予想以上に大変であったが、ホームページが完成したときには、みんなで喜び合い、やりとげた満足感を持つことができた。そして、英語の壁を体験させることで、英語への興味を持ち、自分から調べたりする子も出てくるなど英語学習への関心を高めることもできた。また、この経験を生かして、次年度も、アメリカ、イタリアとの3校での共同学習に取り組んだ。
※共同ページ(リンクは切れています)
98年 VC11
http://www.att.virtualclassroom.org./vc98/vc_11/index.html
99年 VC18
http://www.att.virtualclassroom.org./vc99/vc_18/index.html

「総合とインターネット」                    10  11  12